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もう一人、彼を愛していた女性がいたとしたら・・・韓国ドラマ「美しき日々」にハマった、私の創作文です。かなりムリのある展開・設定になっています。ドラマの美しき日々しかダメな方は読まないで下さいね。
by chiroparo
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傷心・・・3

ヨンスの病室を訪れることになった私は、思わぬ人との再会に
言葉を失っていた。

(室長・・・・・・)

「あっ!室長、おかえりなさい」
「・・・来てくれていたんですね、ナレさん」
「はい・・・ヨンス~!室長が帰ってきたわよ」
入り口の辺りで立ち止まったままで、中に入ろうとしない室長に、ナレが問いかけた。

「あれ?室長入らないんですか?」
「…あぁ・・・そうだね」
そう言いながら、軽く頭を下げて私の横を通り過ぎる。

ずっとずっと、逢いたかったのに。
彼が通り過ぎる時に、ほのかに香る彼の匂い。
懐かしさとともに、胸を押しつぶすような悲しみが、ジニョンを襲っていた。



「そうだ!室長、ジニョンのこと覚えてますよね?散々、主任にいじめられてた…」
ナレは、私と室長を交互に見ながら話しかける。
「ジニョン、さっき言ったでしょう?なんと!室長とヨンス、結婚したのよ」
「・・・・・・」
ナレの言葉に、止めようとしても、唇の震えは止められなかった。
(私、ちゃんしていられているのだろうか・・・)
こんな時なのに、周りの目を気にしている自分が滑稽に思える。

「あの・・・・・・ご無沙汰してます」
それだけ言うので、精一杯だった。
(さっきから室長は、こっちを見ようともしない・・・)
ここへ来てしまった事を、心から後悔している私の前で、一瞬、宙をさまよってから、室長の視線が私に向けられた。
「あぁ、覚えているよ。元気そうですね」
彼の瞳が私だけを見ている。
見つめあう時間が、永遠にも思えた。
(あんなにも、彼との再会を夢見ていたのに…こんな形で、逢う事になるなんて・・・)


「室長、今聞いていたんですけど、ジニョンは、ビクトリーを辞めてからパリに行ってたんですよ。ヨンスと、パリの話をいろいろ聞いていたんです、ねぇ?」
「そう・・・引き止めてしまったんじゃないですか?」

「いいえ・・・ナレ…私、そろそろ帰るわ」
「えぇ~?ジニョン、せっかく来たのに…ヨンスだって、まだジニョンの話を聞きたいはずなのに」
「ごめんなさいね、家族にも遅くなるって言ってこなかったし…また来るわ」
「そう?きっとよ」

「ヨンス、ごめんね。また来るから…」
再び、受話器を持った私は、微笑むヨンスにそう告げ室長の顔を見ずに、会釈して彼の前を通り過ぎた。。

部屋を出た途端、私は全身の力が抜けて、その場に座り込みそうになった。
室長の顔を見た瞬間から、私の思考はすべて動きを止めている。
現実を受け入れたくない…
きっと、そんな思いが、無意識のうちにそうさせていたのだろう。

震える手も震える足も、どんなに叱咤しても今は動きそうにない。
でも、ここにはいられない。
それだけは、止まった思考でも考え付くことだった。

(どこへ?こんな顔をして、伯母の所には行けない。これ以上、心配をかけるわけにはいかないもの)
(じゃあ、一体どこへ行けばいい?)
堂々巡りを繰り返す思考に見切りをつけて…とにかく、この場を離れることを選択した。
今、この部屋の中には美しい夫婦と・・・その妻の親友がいる。
その輪の中に入っていることが辛かった。
だから、逃げてきたのに… どこに行けば、この胸の痛みが和らぐのか、ジニョンには全く思いつかなかった。
(どこでもいい、ここを離れよう・・・)
辛い現実から自分を遠ざけることで精一杯のジニョンは、ふらつく足取りで、一歩また一歩と歩んで行った。

「おかえりなさい・・・」
ガラスの向こうで、微笑むヨンスに笑みを返しながらも、ミンチョルの心の中は、先ほど逢ったジニョンことでいっぱいだった。

微笑み合うふたりの様子を黙ってみていたナレは、帰り支度をしながら言った。
「室長が帰られたのなら、私もそろそろ・・・」
「いや、ナレさん…僕は、また会社に戻らないといけない。ゆっくりして行って下さい。ちょっと様子を見に来ただけですから」
「そうなんですか?」
ナレは、室長の言葉にうなづくヨンスの姿を、目の端で認めている。
「じゃあ、もう少しだけ・・・」
「ありがとう、ナレさん・・・ヨンス、大丈夫かい?」
微笑むヨンスに、もう一度笑みを見せてミンチョルは病室を出た。

「・・・ジニョン?」
本当は、病床の妻を置いて、ジニョンを捜し求めている自分が、許せなかった。

それでも、ジニョンの姿を探す自分がいる。
「僕は、最低だ・・・」
行き場のない思いに、拳をきつく握り締めるしかなかった。
「・・・ジニョン」
ミンチョルは、次の瞬間駆け出していた。
by chiroparo | 2007-01-26 00:50 | 美しき日々46

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