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もう一人、彼を愛していた女性がいたとしたら・・・韓国ドラマ「美しき日々」にハマった、私の創作文です。かなりムリのある展開・設定になっています。ドラマの美しき日々しかダメな方は読まないで下さいね。
by chiroparo
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強くなるために・・・9

「こんにちは・・・」

ベッドから体を起こすと、思わぬ光景にミギョンは驚いた顔を見せた。

「ヨンスさん?・・・どうして?」
「はい・・・退院して1ヶ月経つので、定期検診で病院に来ていたんです」
「まぁ、1ヶ月?もうそんなに経ったのね・・・体調は、その後どう?」
「はい・・・とっても良いです」

「そうよね・・・ご家族の元に帰ったんですもの。元気が出ないはずが無いわね?」
「・・・はい」
はにかんだ笑顔を浮かべたヨンスの手元に、ミギョンの視線が移る。

「・・・お花?」









「はい・・・あの、来る途中・・・とってもきれいな花を見つけて・・・」
(見つけて・・・なんて、変だったかしら?)
ヨンスは、思わず口をついて出た理由に、少しあせっていた。

今日は、退院後初めての通院の日。
本当なら、ミンチョルのたっての希望で送ってもらうはずだったのに・・・
しかし、昨夜遅くミンチョルの携帯が鳴り、その声色の変化からヨンスは何かトラブルが起こったんだと気づいた。
心の中では、とてもガッカリしながらも明るく微笑んで、ミンチョルの送迎を断っていた。
もちろん、ひとりで通院することになったヨンスは、タクシーで病院に来ていたから
この花はミギョンのためにと、途中の花屋で買い求めたものだった。

「ありがとう・・・あなたは、本当に優しい方ね」

ヨンスの気持ちが分かったのか、そう呟くミギョンの言葉に、ヨンスは少し照れくさかった。
お見舞いの花と言っても、高価なものではなく、優しげな野の花で作った花束のようだったから・・・
「花瓶、お借りできますか?」
「えぇ・・・その洗面台の下に・・・」
「はい・・・」

ヨンスは花瓶に花を生けながら、さっきまで一緒にいた男性・・・
ジョンの言葉を思い出していた。
久しぶりの病院・・・
人ごみとざわめき・・・
少しだけ疲れを感じ、ぼんやりと椅子に腰掛けていた時、ちょうど目の前を長身の男性が通り過ぎる。


強くなるために・・・9_f0013877_18124662.gif



「あの!こんにちは・・・」

ヨンスの声に、周りを見回した男性が、ふとヨンスに目を留めた。

「あぁ・・・あなたでしたか?退院なさったと聞きました。おめでとうございます・・・今日は?」
「ありがとうございます・・・定期検診なんです」
「そうでしたか。あっ!先日は、ミギョンさんの所に寄っていただいたんですね。とっても喜んでいましたよ。ありがとうございます」
「いいえ・・・でも私、何もしていないんです。ほんの少しお話しただけで・・・」
「そうだ。自己紹介が遅れましたね。僕は、ジョン・シアーニです。改めて、よろしく・・・」
ジョンは、ヨンスに右手を出して明るい笑顔を向けた。

「・・・キム・ヨンスです」

ジョンの大きく暖かな手が、ヨンスの手をそっと包んだ。
「ミギョンさんに叱られました。ちゃんと名乗る事もしないで・・・本当に失礼しました」
「いいえ・・・」
「隣り・・・良いですか?」
ヨンスは、頷いてひとり分つめてジョンの座る場所を作った。

遠慮がちに開いた場所に腰掛けると、ジョンは穏やかな笑顔を浮かべてヨンスを見つめてくる。
まっすぐに視線に、少しだけ戸惑いを感じたが・・・
その戸惑いは、決して嫌なものではないと思える。
ヨンスは、ずっと一人で生きてきた。
セナと言う・・・妹のように思う子はいたが、両親が名乗り出ない限り・・・
血の繋がりで言えば、この世に一人きり・・・
だから、直感的に相手の心が見える。
しかしそれは、ちゃんと見通すわけではなく、何となく自分に対して悪意があるかどうか分かる・・・
その程度のものだ。
だから、時々会うだけの・・・
名前も知らなかったジョンの事も、悪い人ではないと感じていた。
自分を見つめる瞳から、あたたかさが溢れてくるように思えるから。

会計の待ち時間、しばらくは他愛ない話しで過ごしていたが、ヨンスは意を決してジョンに問いかけた。
「・・・あの」
「・・・何でしょうか?」
前を向いてソファに座っていたジョンが、身体ごとヨンスの方に向かう。

「・・・ミギョンさんは、何の病気なんですか?」
「・・・なぜ?」
「いえ・・・いいんです。立ち入った事を聞いてしまいました。すみません・・・」
「・・・ミギョンさんは・・・」
「?」
「・・・癌なんです」
「!!」

一瞬のうちに周りのざわめきが消える。
ヨンスは、どうかそれが聞き違いであって欲しいと思った。

「それも、もう手の施しようが無い・・・」
「そんな・・・」
「ミギョンさんもご存知です・・・」
「手術とか・・・何か・・・」

ジョンは、ヨンスの青褪めた顔を見て慌てて謝った。
「すみません・・・つい仕事柄、こんなことを口走ってしまった・・・」
「?」

「ミギョンさんの癌を発見したのは私です。その時にはもう、他への転移が見られた・・・」
「・・・あなたは、お医者様なんですか?」
「はい・・・これも言っていませんでしたね?」
「えぇ・・・」
「それでも治療を薦めた私に、ミギョンさんは笑って言いました。苦しい思いをするのは、自分だけで十分だと・・・」
「・・・・・・」
「治療をして助かるのなら、どんな事にも耐えられる。だけど、自分は違うから・・・治療をして苦しむ姿をご主人には見せたくないと・・・告知した時、患者であるミギョンさん本人よりもご主人の方が取り乱されました。なのにミギョンさんは・・・ずっと落ち着いて微笑んでいた・・・」

その時のことを思い出しているのが、いつも笑顔を絶やさないジョンの表情が苦悩にゆがんでいる。
「ごめんなさい・・・こんなこと、お聞きしてしまって・・・」
「でも、どうして・・・」
「私も病気でした、一時は死も覚悟していたんです。でも、家族の助けで・・・こうして退院できました。まだ、この病気とは付き合っていかなければなりませんが・・・それでも、未来に目を向けることができます。今日は、これからミギョンさんの所にお邪魔しようと思っているんです。そこで不用意に治るとか頑張れとか・・・言いたくなくて」
「そうでしたか・・・お気遣いありがとうございます」
「いいえ・・・」
ヨンスは、俯いたまま頷いた。

「私は、母を亡くしているので・・・いつの間にか、ミギョンさんを母のように思っていました。変なことをお願いしてしまって・・・もしもご迷惑なら・・・」
「迷惑だなんて・・・もし、そう思っていたら会いに行ったりしませんから」
ヨンスの言葉に、ジョンは安堵の表情を見せた。

そしてヨンスは、ミギョンの病室を訪れた。
ドアの前で、何度も深呼吸し・・・笑みを浮かべてドアをノックしたのだ。


強くなるために・・・9_f0013877_18124662.gif



今、ヨンスの目の前で花を愛でて、やさしく微笑むミギョンは・・・・・・
微かに、ヨンスの瞳に写るミギョンの姿がかすみ始めた。
あわてて立ち上がると、静かにミギョンに話しかける。
その涙に、決して気づかれぬように・・・

「あの・・・スケッチブック、持って来たんです」
「まぁ・・・ありがとう。でも、重かったでしょう?」
「はい、だからほんの数冊だけですけど・・・」
「・・・見せていただいていい?」
「・・・はい」


「あの・・・ミギョンさん・・・」
スケッチブックに視線を落としたまま、ミギョンが返事を返した。
「何かしら?」
「あの・・・もしかして、ミギョンさんは絵を描いていらっしゃるんじゃ・・・」
「どうして?」
「あの・・・横顔しか知らないんですけど・・・とてもよく似た画家がいるんです・・・」
「横顔?」
「えぇ・・・画集で見たんです。作品と一緒の写真は、横顔だけでした・・・その方が、ミギョンさんと・・・」

「・・・・・・」
「すみません・・・私ったら、変なことを聞いてしまいましたね・・・」

急に恥ずかしくなったヨンスは、少し火照った頬に手のひらを当てた。
「J.Mon bebeという画家に、ミギョンさんが似ていらっしゃる気がして・・・」
「・・・・・・」

ミギョンは、黙って枕の下を探る。

「・・・ミギョンさん?あの・・・」
手渡されたのは、ノートのようだった。

「これは?・・・」
「私だけじゃズルイわね・・・どうぞ、開いてみて・・・」
「はい・・・」

開いたページのすべてに、柔らかなタッチの絵が描かれていた。
「これ・・・」
「そう・・・ヨンスさんの言っていたのは、私です」
「J.Mon bebe・・・?」
「えぇ・・・」

今度はヨンスがノートから目を放せなくなる番だった。

「最近は、起きているのが辛くて・・・なかなか書けないのだけど、気分が良い時に少しずつね」
「えぇ・・・私にも、そんな時がありました。無理なさらないで下さいね・・・」
「ありがとう・・・良かったら、貰っていただけないかしら?」
「?」
「ごく普通のノートに書いたものだし・・・ヨンスさんが嫌じゃなかったら・・・」
「そんな・・・嫌だなんて、嬉しいです。でも、良いんですか?」
何も言わずに、ミギョンは頷き微笑む。
それは儚くて・・・
そのまま、光の中に溶けて消えていってしまいそうに思えた。

「今日は、こんなに長い時間お邪魔してしまいました。お疲れになったでしょう?」
「いいえ・・・とても、楽しかったわ」

「そろそろ失礼しますね・・・」
「ありがとう・・・娘が来る頃だから、それまで少し眠るわ」
「それでは・・・またお邪魔します」

ヨンスにとって、ミギョンと過ごした時間は、とても楽しいものだった。
気を使わずに、絵のことをたくさん話すことができて嬉しい・・・
でも、それだけだろうか?
不思議な感情が、ヨンスの心を包んでいるのに気づいたが、それが何なのかは分からない。

でも、悲しいとか寂しいとか、そんな苦しくなるような感情じゃなく・・・
自然と笑みが浮かんでくるような、あたたかで心地よいものだった。
by chiroparo | 2008-03-07 18:13 | 美しき日々59

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